内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術(SEPS)について
下肢静脈瘤は主に表在静脈(大伏在静脈や小伏在静脈)の血液逆流による病気です。しかし、静脈瘤の重症型(うっ滞性静脈炎、潰瘍形成)では表在静脈の逆流に加え、不全穿通枝が原因となっているところがあります。
表在静脈と深部静脈の間には穿通枝という連絡路があり、本来は表在静脈から深部静脈に流れるように一方弁があります(図参照)。この弁が壊れてしまい、深部静脈から表在静脈へ逆流を起こしているのが不全穿通枝です。不全穿通枝がある際には皮膚切開によりこの静脈を切開する必要があります。しかし、皮膚炎や潰瘍のために皮膚切開が困難なことがあります。無理に切開すると傷の治りが遅くなったり、新たな潰瘍を形成することがあるからです。
そのような際に有用なのがSEPSです。病変部から離れた健常な皮膚を小さく切開し内視鏡で観察しながら穿通枝を凝固切離装置で切離します。この方法は2014年4月に保険収載されました。そして、保険治療をおこなうためにはこの術式の経験を積み施設認定を得なければなりません。当院では2017年7月に認定を得ました。この認定を取っている施設は全国でまだ少なく2017年までで26施設程度です。
静脈瘤の最も多い現任は大伏在静脈の逆流であり、これに対してはレーザー焼灼術の適応になります。SEPSの適応になる静脈瘤の患者さんは多くありません。当院では空気脈波検査、静脈エコー検査などにより病態を十分に把握したうえでレーザー焼灼術やSEPSの適応を決めています。
静脈瘤の手術について
当院では2013年5月からレーザー焼灼術(980nm)を開始しました。当初はレーザー焼灼術は980nmの波長のレーザー照射の器械のみが保険適用されていました。レーザー焼灼術は従来の静脈抜去切除術に比べ、小さな傷で手術を施行できる利点があります。しかし、術後に焼灼した部位(主に大腿部)に痛みや皮下出血斑が生じてしまうという欠点がありました。この欠点をなくするために開発されたのが波長1470nmで360度全周性に焼灼する器械です。この器械を使用することにより術後の痛みや出血斑は有意に小さくなったと報告されており、2014年5月に保険適応となりました。
そして、当院においても2015年5月14日より1470nmのレーザー焼灼術に切り替えました。
今後も術式や術後管理に加え、患者さんが楽に治療を受けていただくために努力していくつもりです。
静脈瘤に対する手術件数
2013年~2021年における下肢静脈瘤の手術件数を掲示します。
受診案内
<外来診療>
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